跼蹐
きょくせき
名詞
標準
文例 · 用例
いわんや、第三回の募集の時にすら先生は既に左のごとくに云うているのである、前略、古来小区域に跼蹐して陳套を脱するあたわざりし桜花がいかに新鮮の空気に触れて絢爛の美を現したるかは連日掲載の短歌を見し人の熟知するところなるべし。
— 伊藤左千夫 『竹乃里人』 青空文庫
わたくしは今立っている小川の縁の道の赤土が、昼過ぎの陽に照され、にちゃにちゃして茜色の雲を踏んで立っているような気持のするのに、眼の前一面に実のり倒れた金色の稲田を見渡して跼蹐んだ気持は何もかも何処かへ持って行かれました。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
よしんば、それが青春らしいものを、もだもだと表現しているにしても、二十代、三十代の者を唯一の読者とするような作品では、所詮はせせこましい天地に跼蹐しているに過ぎない。
— 織田作之助 『東京文壇に与う』 青空文庫
修業の上から言っても、連俳の自由な天地に遊んだ後にその獲物を発句に凝結させる人と、始めから十七字の繩張りの中に跼蹐してもがいている人とでは比較にならない修辞上の幅員の差を示すであろう。
— 寺田寅彦 『俳諧の本質的概論』 青空文庫
件の貞盛は、追捕を免れて跼蹐として道に上れる者也、公家は須らく捕へて其の由を糺さるべきに、而もかへつて理を得るの官符を給はるとは、是尤も矯飾せらるゝ也。
— 幸田露伴 『平将門』 青空文庫
あるいはこの不自由なる小天地に長く跼蹐せる反響として、かく人心の一致集注を見るならんも、その集中点の必ず妾に存せるは、妾に一種の魔力あるがためならずや。
— 福田英子 『妾の半生涯』 青空文庫
形式の人は、底のない道義の巵を抱いて、路頭に跼蹐している。
— 夏目漱石 『虞美人草』 青空文庫
シャロットの女は鏡の限る天地のうちに跼蹐せねばならぬ。
— 夏目漱石 『薤露行』 青空文庫