蹂
蹂
名詞
標準
文例 · 用例
谷が狭くなって、崖側を行くと、緩いながらも雪の傾斜で辷るから、ミヤマナナカマドの枝を捉えながら上る、前にも増した雪の断裂で、草鞋に踏み蹂った雪片は、山桜の葩弁のように、白く光ってあたりに飛び散る。
— 小島烏水 『槍ヶ岳第三回登山』 青空文庫
薬を飲ませて裸にしといちゃ差引|零じゃないか、卵を食べさせて男に蹂躙されりゃ、差引欠損になるじゃないか。
— 葉山嘉樹 『淫賣婦』 青空文庫
お前の轢殺車の道に横わるもの一切、農村は蹂られ、都市は破壊され、山野は裸にむしられ、あらゆる赤ん坊はその下敷きとなって、血を噴き出す。
— 葉山嘉樹 『牢獄の半日』 青空文庫
正直であり善良であるために、生活が全で滅茶々々に資本家のために踏み蹂られる。
— 葉山嘉樹 『工場の窓より』 青空文庫
四「自分さへ良ければ他は蹂躪つても構はない」と云ふ考へは、他の其思想と衝突する。
— 葉山嘉樹 『工場の窓より』 青空文庫
おれたちは、十分に組織された暴力をもって傷つけられる上に、まだ足りないで、自分自身の暴力まで用いて、自分を傷つけるんだ」 小さな伝馬は、その危険なる海上を、その暗黒の中に、船長の地位も権力をも完全に蹂躙して、まるで冗談のように、クルリクルリと揺れて、一つところにかろうじて漂い得ていた。
— 葉山嘉樹 『海に生くる人々』 青空文庫
全く船長にしてみれば、その誇りを傷つけられ、自分の優越感を裏切られ、自分の特権を蹂躙され、ことに彼さえもまだ遠慮していたのに、「女郎買い」に行ったことは、彼を「愚弄」することはなはだしいものであった。
— 葉山嘉樹 『海に生くる人々』 青空文庫
この地上には、むやみに多くの権利が、他の権利を蹂躙することによって存在してる。
— 葉山嘉樹 『海に生くる人々』 青空文庫