胸腹
きょうふく
名詞
標準
文例 · 用例
しかし良三は自ら双臂胸腹を摩して、粟粒大の物が膚に満ちてゐるのを知つた。
— 森鴎外 『伊沢蘭軒』 青空文庫
そうした不可解な心理を包んだ黒怪人物……若林博士は、かくして間もなく、少女の胸腹部を、咽頭の処まで縫合せ終りますと、最後に一際鋭い小型のメスを取上げて、四一四号の少女の顔面に立向いました。
— 夢野久作 『ドグラ・マグラ』 青空文庫
そして疲れはてては咽喉や胸腹に刃物を当てる発作的な恐怖に戦きながら、夜明けごろから気色の悪い次ぎの睡りに落ちこんだ。
— 葛西善蔵 『贋物』 青空文庫
ローマ宗の寺院はこれに反し、堂内別にヤソ処刑の礼壇を設け、その前に十字架上のヤソ像を仰臥せしめ、参詣のものをして代わり代わりひざまずき進みて、その像の手足胸腹を口吻せしむ。
— 井上円了 『欧米各国 政教日記』 青空文庫
刑場では、十字架の上に柱の出たところがあってそれにもとどりを繩で結びつけ、着衣の袖を断ち切って両手に巻きつけ、胸腹にも着物のはしばしを集めて三カ所に繩でくくって胸腹をあけておく。
— 服部之総 『せいばい』 青空文庫
関東八州および東海諸国はその胸腹、しかして京畿はその腰臀なり。
— 徳富蘇峰 『将来の日本』 青空文庫
事実我我の親しい学生諸君は一定の法式によって除かれた皮膚筋肉の深所に現われた血管神経に顔を近寄せ、胸腹の内臓の中に頭を埋めるようにして右手のメスと左手のピンセットを動かすのである。
— 森於菟 『屍体異変』 青空文庫