恩怨
おんえん
名詞
標準
文例 · 用例
さあれ日は過ぎ月は逝き、なれ等血もなく涙なく、よくぞ鬩めげる数千年、さても殺生はての死の、よくぞ好きなる、おゝ永遠の闘争よ、おゝ恩怨の同胞よ!
— ――人と海―― 『海の詩』 青空文庫
おゝ、恩怨の同胞よ!
— ――人と海―― 『海の詩』 青空文庫
Wという名前を覚えていないし、それこそ、なんの恩怨もないのだし、私は高等学校時代の友人の顔でさえ忘れていることが、ままあるくらいの健忘症なのに、W君の、その窓から、ひょいと出した丸い顔だけは、まっくらい舞台に一箇所スポットライトを当てたようにあざやかに眼に見えているのである。
— 太宰治 『酒ぎらい』 青空文庫
僕は大井広介とは、遊んだ事もあまり無いし、今日まで二人の間には、何の恩怨も無かった筈だが、どういうわけか、このような難題を吹きかける。
— 太宰治 『無題』 青空文庫
僕は大井廣介とは、遊んだ事もあまり無いし、今日まで二人の間には、何の恩怨も無かつた筈だが、どういふわけか、このやうな難題を吹きかける。
— 太宰治 『無題』 青空文庫
中原〔逐〕鹿三十年、恩怨無別星花転、転と来て転句だ……おゝ何といふ向ふの眼、燃え立つやうな憎悪である。
— 宮沢賢治 『疑獄元兇』 青空文庫
恩怨の事柄は必ず報ゆる町奴風の昔気質の逸作が、こう思い立った以上、いつかそれが執り行われることは明かである。
— 岡本かの子 『雛妓』 青空文庫
」 お神はそう言って涙を拭いたが、昏睡中熱に浮かされた銀子は、しばしば呪いの譫言を口走り、春次や福太郎が傍ではらはらするような、日常|肚に畳んでおいたお神への不満や憤りを曝け出したりしたので、九分九厘まで駄目となったこの際に、心残りのないように、恩怨に清算をつけるのだった。
— 徳田秋声 『縮図』 青空文庫