遁入
とんにゅう
名詞
標準
文例 · 用例
幕末に際し、実家に遁入して匿まわれた多くの幕士の中の一人だが、美男なので実家の娘に想われ、結婚して当主に直った人であった。
— 岡本かの子 『雛妓』 青空文庫
ただ、支那のインテリ青年は、その大多数が奥地へ遁入し、残った少数も多くは野にひそんでいる。
— 豊島与志雄 『北京・青島・村落』 青空文庫
このうち固より大多数を占める支那人中には、戦火を避けて租界に遁入して来た者甚だ多く、充分の職場を求むるに由なく、徒らに蝟集している観さえある。
— 豊島与志雄 『上海の渋面』 青空文庫
多くは奥地に遁入してしまっている。
— 豊島与志雄 『上海の渋面』 青空文庫
嘗て八・一三事件後、文化界救亡協会というのが共産党員によって作られていたが、文化人の奥地への遁入甚だしいため、新たに国民党系の人々によって文芸界救亡協会というのが結成され、その発会式には両派の激しい抗争があったそうであるが、それらの人々も今は求むる術がない。
— 豊島与志雄 『上海の渋面』 青空文庫
むしろシラギがコマを亡した直後に続々来朝移住したのはシラギ人だが、勝った方が堂々と来朝移住し、負けた方がコソコソ遁入して隠遁定着するのも自然の数で、正史が亡命者の方を大ッピラに記載できないような意味もあったろう。
— 高麗神社の祭の笛――武蔵野の巻―― 『安吾の新日本地理』 青空文庫
下流で見たあの大きな流れがいったん山すそに遁入すると、急にくびられたように狭くなって、滝の多い岩壁を露出した「鰐のあくび」のような形相に一変する。
— 細井吉造 『二つの松川』 青空文庫