余炎
よえん
名詞
標準
burning embers
文例 · 用例
上田の町を歩いている頃は高原の太陽が町のアスファルトに照り付けて、その余炎で町中はまるで蒸されるように暑く、いかにも夏祭りに相応しい天気であった。
— 寺田寅彦 『高原』 青空文庫
それ以来源氏はいろいろと昔以上の好意を表しているのであるが、なお若かった日すらも恨めしい所のあった源氏の心のいわば余炎ほどの愛を受けようとは思わない、もう二人に友人以上の交渉があってはならないと御息所は決めていたから、源氏も自身で訪ねて行くようなことはしないのである。
— 澪標 『源氏物語』 青空文庫
しかし水源地の銅山の樹が濫伐されたために、年々洪水の被害が絶えないのと、その洪水のたびに、やはり鉱毒が濁水と一緒に流れ込んでくるので、鉱毒問題の余炎がとかく上りやすいので、政府ではその禍根を絶つことに腐心した。
— 伊藤野枝 『転機』 青空文庫
絶巓は大きな石鏃のやうに、夕焼の余炎が消えかかつた空を、何時も黒々と切り抜いてゐた。
— 芥川龍之介 『槍ヶ嶽紀行』 青空文庫
昼の余炎はまださめ切らなかったが、野面をわたる風は寒かった。
— 地に潜むもの 『地上』 青空文庫
日露戦争の余炎がまださめぬ頃で、面籠手かついで朝稽古から帰って来る村の若者が「冷たいでしょう」と挨拶することもあった。
— 徳冨健次郎 『みみずのたはこと』 青空文庫
もう、日は、暮れてしまって、西の空には一|日の余炎もうすれてしまいました。
— 小川未明 『石段に鉄管』 青空文庫
紅い夕日は、僅かにほんのりと遠くの地平線に余炎を残していた。
— 小川未明 『過ぎた春の記憶』 青空文庫