無器用
ぶきよう
形容動詞
標準
文例 · 用例
無器用なお前樣が此子いぢくる譯にも行くまじ、お歸りに成るまで私が乳を上げませうと、有さまを見かねて、隣の妻の子を抱いて行くに、何分お頼み申ますと言ひながら、美尾の行衞に心を取られてお町が事はうはの空に成ぬ。
— 樋口一葉 『われから』 青空文庫
さもなければ、無器用朴訥な愛嬌で助かる。
— 中原中也 『我邦感傷主義寸感』 青空文庫
右の方を仰ぐと、赤沢岳が無器用な円頂閣のように、幅びろく突ッ立って、その花崗岩の赤く禿げた截断面が、銅の薬鑵のような色をして、冷めたく荒い空気に煤ぶっている。
— 小島烏水 『槍ヶ岳第三回登山』 青空文庫
雲消えて皹も亦拭ひ去らる、山色何の瑠璃ぞ、只だ赭丹赭黄なる熔岩の、奇醜大塊を、至つて無器用に束ねて嶄立せるのみ、その肩を怒らし胸を張れるを見て、淑美なる女性的崇高を知らず。
— ――明治三十六年八月七日御殿場口にて観察―― 『霧の不二、月の不二』 青空文庫
無器用ものの、こった一念の強さほど尊いものは無いのだ。
— 太宰治 『正義と微笑』 青空文庫
なにをさせても無器用なお前が。
— 太宰治 『道化の華』 青空文庫
私も、既に四十ちかくに成りますが、未だ一つも自身に納得の行くような、安心の作品を書いて居りませんし、また私には学問もないし、それに、謂わば口重く舌重い、無器用な田舎者でありますから、濶達な表現の才能に恵まれている筈もございません。
— 太宰治 『風の便り』 青空文庫
頭はわるし、文章は下手、学問は無し、すべてに無器用、熊の手さながら、おまけに醜貌、たった一つの取り柄は、からだの丈夫なところだけであった。
— 太宰治 『答案落第』 青空文庫