病前
びょうぜん
名詞
標準
文例 · 用例
不自由なる牢獄にて大患に罹りし事とて、一時全快はなしたるものから、衰弱の度甚だしく、病気よりは疲労にて斃るることもやと心配せしに、これすら漸く回復して、遂には病前よりも一層の肥満を来し、その当時の写真を見ては、一驚を喫するほどなり。
— 福田英子 『妾の半生涯』 青空文庫
重い病苦のその笑顔というのが、それ自身、少年の生涯の思いを吐き出していると見え、病前数年に亘る私たちの家族の嘗めた境遇の追変が罪ぶかく私の胸を刺した。
— 鷹野つぎ 『窓』 青空文庫
茶山は更に、「病前亦不能多喫」と添加してゐる。
— 森鴎外 『伊沢蘭軒』 青空文庫
当時彼はまだ発病前の丈夫な身体でしたよ。
— その十八 踊る時計 『明治開化 安吾捕物』 青空文庫
じつはここへくる途中、青山の久保本まで大廻りして、あらかじめ女主人と下足番の爺やとから、発病前後のことを聞きただしてきたのだが、師匠の一家はいま聞きしに勝る惨憺たる体落だった。
— 正岡容 『小説 圓朝』 青空文庫