色褪せ
いろあせ
名詞
標準
文例 · 用例
ここでターバンを巻いた印度人、皮膚の色褪せたペルシヤ人、半黒焼のマレー人、亡国的なポルトガル人などの群に交って北京を出発してから半ヶ月後、支那の現代のシステムに出現した支那女との恋を棄てて北京以来の友である陳子文と米良は病み疲れていた。
— 吉行エイスケ 『地図に出てくる男女』 青空文庫
ちかきころ水無月中旬、二十日余り照り続きたる、けふ日ざかりの、鼓子花さへ草いきれに色褪せて、砂も、石も、きら/\と光を帯びて、松の老木の梢より、糸を乱せる如き薄き煙の立ちのぼるは、木精とか言ふものならむ。
— 泉鏡花 『紫陽花』 青空文庫
」 看護員は犇々とその身を擁せる浅黄の半被股引の、雨風に色褪せたる、譬へば囚徒の幽霊の如き、数個の物体を※はして、秀でたる眉を顰めつ。
— 泉鏡花 『海城発電』 青空文庫
三島が色褪せたのではなくして、私の胸が老い干乾びてしまったせいかもしれない。
— 太宰治 『老ハイデルベルヒ』 青空文庫
そこも燐や、硫黄や、塩酸加里などの影響を受けて、すべてが色褪せ、机の板は、もく目ともく目の間が腐蝕し、灰色に黝ずんでいた。
— 黒島傳治 『武装せる市街』 青空文庫
前年、この渓流に添って豊に張られた金網のなかに雌雄並んで豪華な姿を見せて居たのが、今は素立ちのたった一羽、梅花を渡るうすら冷たい夕風に色褪せた丹頂の毛をそよがせ蒼冥として昏れる前面の山々を淋しげに見上げて居る。
— 岡本かの子 『鶴は病みき』 青空文庫
十二歳の時分と覚えて居ます、頃は春の末ということは庭の桜が殆ど散り尽して、色褪せた花弁の未だ梢に残って居たのが、若葉の際からホロ/\と一片三片落つる様を今も判然と想いだすことが出来るので知れます。
— 国木田独歩 『運命論者』 青空文庫
されど我を動すことこれより深かりしは、色褪せたる人骨と灰に印せる美しき婦人の乳房となりき。
— IMPROVISATOREN 『即興詩人』 青空文庫