突き抜け
つきぬけ
名詞
標準
文例 · 用例
子規子を知らんと欲せば、子規子の議論と子規子の製作とを、突き抜けてじかに子規子その人を見よ、子規子の議論と子規子の製作とは、決して子規子の満足したるものにあらざるなりと。
— 正岡先生論 『絶対的人格』 青空文庫
蛇を見てから、私は、悲しみの底を突き抜けた心の平安、とでも言ったらいいのかしら、そのような幸福感にも似た心のゆとりが出て来て、もうこの上は、出来るだけ、ただお母さまのお傍にいようと思った。
— 太宰治 『斜陽』 青空文庫
藪を飛び越え森を突き抜け一直線に湖水を渡り、狼が吠え、烏が叫ぶ荒野を一目散、背後に、しゅっしゅっと花火の燃えて走るような音が聞えました。
— 太宰治 『ろまん燈籠』 青空文庫
車は村に入り、突き抜けて村外れの細い流れに板橋の架っている前で停りました。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
魂の底を突き抜けて虚無の中にまで沈んだような、脱力の沈黙であった。
— 岡本かの子 『決闘場』 青空文庫
この無限の大自在所に突き抜けてみると、ありがたいが、おれ見たいな人間には少し寂しい気がする。
— 岡本かの子 『狐』 青空文庫
路地を突き抜けて、南へ折れると四天王寺、北へ折れると生国魂神社、神社と仏閣を結ぶこの往来にはさすがに伝統の匂ひが黴のやうに漂うて仏師の店の「作家」とのみ書いた浮彫の看板も依怙地なまでにここでは似合ひ、不思議に移り変りの尠い町であることが、十年振りの私の眼にもうなづけた。
— 織田作之助 『木の都』 青空文庫
今の子供らがおとぎ話の中の化け物に対する感じはほとんどただ空想的な滑稽味あるいは怪奇味だけであって、われわれの子供時代に感じさせられたように頭の頂上から足の爪先まで突き抜けるような鋭い神秘の感じはなくなったらしく見える。
— 寺田寅彦 『化け物の進化』 青空文庫