蝮蛇
ふくじゃ
名詞
標準
文例 · 用例
とぐろを巻いて、しかも精悍な、ああ、それは蝮蛇そっくりである。
— 太宰治 『春の盗賊』 青空文庫
その晩、家へ帰って東海道名所図会を繰ってみると、三州池鯉鮒の宿のくだりに知立の神社のことが詳しく記されて「蝮蛇除の神札は別当松智院社人よりこれを出だす。
— お化け師匠 『半七捕物帳』 青空文庫
夏秋の頃山中叢林にこれを懐中すれば蝮蛇逃げ去るという、云々」と、書いてあった。
— お化け師匠 『半七捕物帳』 青空文庫
何を食うて生きているのじゃ」と、問うたので、度肝を抜いてくれようと、蝮蛇を食うている旨答えると、「日の下にあって、最も聰明にして怖しき毒蛇をくらうとは、近頃珍妙じゃ。
— 織田作之助 『猿飛佐助』 青空文庫
三町四方に蚤の飛ぶのも聴えるこの耳に、うるそうてならんわい」 と、言いざまに、煙の如く消え去り、さらばじゃという声は、遙か天井より聴えたが、それから毎夜乾の方に星の流れる頃には、必ず現われて、まず蝮蛇の頭をペロペロとくらったあと、鳥人の術の伝授に掛り、三年掛った。
— 織田作之助 『猿飛佐助』 青空文庫
そしてある夜、鳥居峠の蝮蛇も今宵がくらい収めじゃと、老人はいつも二倍の十匹を、それも春先きの良い奴ばかしを、尻尾も余さず平げたので、ついのぼせてしもうたのか、おびただしく鼻血を噴きだした。
— 織田作之助 『猿飛佐助』 青空文庫
その作り方は、土龍、井守、蝮蛇の血に、天鼠、百足、白檀、丁香、水銀郎の細末をまぜて……」 そんな陰謀があるとは、知らぬが仏の奈良の都へ、一足飛びに飛んだ佐助は、その夜は大仏殿の大毘盧遮那仏の掌の上で夜を明かした。
— 織田作之助 『猿飛佐助』 青空文庫
それと同時に若者の爲には彼は蝮蛇の毒牙の如きものでなければ成らぬ。
— 長塚節 『土』 青空文庫