張り切り
はりきり
名詞
標準
文例 · 用例
私の神経は暗い行手に向かって張り切り、今や決然とした意志を感じる。
— 梶井基次郎 『冬の蠅』 青空文庫
彼女の肉体は熟り、真白の皮膚は硬く張り切り、ぽったりした頬は林檎のように紅かった。
— 徳田秋声 『縮図』 青空文庫
△中尾彰氏――モダニスト、よろし、あの張り切り方は、多くの独立型の張り切り方と、形がちがつてゐて面白い。
— 美術論・画論 『小熊秀雄全集−19−』 青空文庫
この物勢い込んで飛ぶ時、翅が張り切りおり、なかなか博物館で見る死骸を引き伸ばした標品とは、大いに大きさが違うようだった。
— 蛇に関する民俗と伝説 『十二支考』 青空文庫
そしてそのあらゆる間、絶え間なく彼等の心は、張り切り得る最高の限度に常に張り切つてゐなければならなかつた。
— 小林多喜二 『一九二八年三月十五日』 青空文庫
私は世界の運動を鵜飼と同様だとは思わないが、急流を下り競いながら、獲物を捕る動作を赤赤と照す篝火の円光を眼にすると、その火の中を貫いてなお灼かれず、しなやかに揺れたわみ、張り切りつつ錯綜する綱の動きもまた、世界の運動の法則とどことなく似ているものを感じた。
— 横光利一 『鵜飼』 青空文庫
単にそう考えるのではなく、全身でそう感じているために、私たちの生活全面にわたっての明るさ、平静さ、確信がヴォルガのように豊かな力で張り切りながら流れてゆく、そういう工合です。
— 一九三六年(昭和十一年) 『獄中への手紙』 青空文庫
婦人の甲斐なさ、それよ忠義の志ばかりでおじゃるわ』とこの眼から張り切りょうずる涙を押えて……おおおれは今泣いてはいぬぞ、忍藻……おれも武士の妻あだに夫を励まし、聟を急いたぞ。
— 山田美妙 『武蔵野』 青空文庫