遍満
へんまん
名詞
標準
文例 · 用例
悟るということは、生命の遍満性、流通性を体証したことで、一|匹の鯉魚にも天地の全理が含まれるのを知ると同時に、恋愛のみが全人生でなく、そういう一部に分外に滞るべきでないとも知ることです。
— 岡本かの子 『鯉魚』 青空文庫
これに反して、心を腐らし、自分から宇宙に遍満する光明方面を遮って暮している人間は、一見体裁よくとも、生命の底の幸福や逞しさに欠けている惨めな救われ難い存在であるというのです。
— 岡本かの子 『仏教人生読本』 青空文庫
やがてその音は部屋うちに溢るるばかりに遍満して来た。
— 島木健作 『ジガ蜂』 青空文庫
あゝ泥牛海に入つて消息なし、しかも其消息や宇宙に遍満せる也。
— 石川啄木 『閑天地』 青空文庫
既に宇宙に遍満す、万人の霊我、神明の懐に入つて何の差別なく距離なく、完たく無量無辺四劫に亘るの天寿を呼吸して合一す。
— 石川啄木 『閑天地』 青空文庫
すなわち『大法炬陀羅尼経』に、悪世にこの世界|所有悪竜大いに猛威を振い、毒蛇遍満して毒火を吐き人畜を螫し殺し、悪人悪馬邪道を行い悪行を専らにすと説かれた。
— 田原藤太竜宮入りの話 『十二支考』 青空文庫
詩の世界は人間界の実象のみの占領すべきものにあらず、昼を前にし夜を後にし、天を上にし地を下にする無辺無量無方の娑婆は、即ち詩の世界なり、その中に遍満するものを日月星辰の見るべきものゝみにあらずとするは、自然の憶度なり。
— 北村透谷 『他界に対する観念』 青空文庫
霊の軍勢の虚空を遍満するそのなかに。
— 倉田百三 『出家とその弟子』 青空文庫