焼け原
やけはら
名詞
標準
文例 · 用例
東京が焼け原になってしまって何一つ無くなった、ということも、殷賑だった東京と、その店々の印象を大切にもっている母には事実を疑わないまでも実感から遠いことであろう。
— 宮本百合子 『播州平野』 青空文庫
陸をみれば、泊、八幡、白子の在所在所、いずれをみても荒涼たる焼け原と化して、あわれ、並木のおちこちには、にげる途中でなげすてた在家の人の家財荷物が、うらめしげに散乱して、ここにも、斬ッつ斬られつした血汐や槍の折れや、なまなましい片腕などがゆくところに目をそむけさせる。
— 吉川英治 『神州天馬侠』 青空文庫
大燒原の野と成つた、下町とおなじ事、殆ど麹町の九分どほりを燒いた火の、やゝしめり際を、我が家を逃出たまゝの土手の向越しに見たが、黒煙は、殘月の下に、半天を蔽うた忌はしき魔鳥の翼に似て、燒殘る炎の頭は、その血のしたゝる七つの首のやうであつた。
— 泉鏡太郎 『間引菜』 青空文庫
フエデリゴはこの燒原を畫かんとて來ぬ。
— IMPROVISATOREN 『即興詩人』 青空文庫
停戰になつて歸つて來ると、東京は見渡すかぎり、どこもかしこも燒原で、もみぢの店のおかみさんや料理番の行衞も其時にはさがしたいにも搜しやうがなかつた。
— 永井荷風 『羊羹』 青空文庫