此の世
このよ
名詞
標準
文例 · 用例
テカ/\した靴屋の店や、ヤケに澄ました洋品店や、玩具屋や、男性美や、――なんで此の世が忘らりよか。
— 中原中也 『散歩生活』 青空文庫
弟はもう此の世のものではないのである!
— 中原中也 『亡弟』 青空文庫
「此の世の中から、もののあはれを除いたら、あとはもう意味もない退屈、従つて憔燥が残るばかりであらう。
— 中原中也 『詩と其の伝統』 青空文庫
一先づ拑子を引くと再び赤坊は此の世のものとしての苦しさうな表情となつて出来るだけ泣き喚き出した。
— 中原中也 『医者と赤ン坊』 青空文庫
――私の直観は、即ち私は、此の世に生きて、事象物象に神秘を感ずるからである。
— 中原中也 『我が詩観』 青空文庫
とまれ、此の世に更新を与へるもののその原初、その胎盤は何か?
— 中原中也 『我が詩観』 青空文庫
「まあ色々でこそ此の世が成立つのだらう……」――そんな客観的な考へで、私は自分が何かに付けて思索する癖のあることを、不幸かも知れないといふ半面の気持に強ひられて、好い加減でうまく胡魔化して置きたかつた。
— 中原中也 『その頃の生活』 青空文庫
彼女は、連れ出した男を此の世に於ける唯一の寄すがり者のやうに思へる心に浮々した足取で、そのフェルトをペタペタ夜道に打つつけながら、解雇された仲間で一番給料も多かつた男の下宿の方に歩んだ。
— ――飜弄さる 『蜻蛉』 青空文庫