来たる
きたる
動詞
標準
文例 · 用例
それよ、私は私が感じ得なかつたことのために、罰されて、死は来たるものと思ふゆゑ。
— 中原中也 『山羊の歌』 青空文庫
擦りてはまたもの書きなどせる、なかにむつかしき字のひとつ形よく出来たるを、姉に見せばやと思ふに、俄にその顔の見たうぞなりたる。
— 泉鏡花 『竜潭譚』 青空文庫
後れたる人力車は次の建場にてまた一人を増して、後押しを加えたれども、なおいまだ逮ばざるより、車夫らはますます発憤して、悶ゆる折から松並み木の中ほどにて、前面より空車を挽き来たる二人の車夫に出会いぬ。
— 泉鏡花 『義血侠血』 青空文庫
白糸はひたと雨戸に身を寄せて、何者か来たるとかんと面を顰めつつ、よたよたと縁を伝いて来たりぬ。
— 泉鏡花 『義血侠血』 青空文庫
真中に古井戸一ツありて、雑草の生い茂りたる旧空地なりしに、その小屋出来たるは、もの心覚えし後なり。
— 泉鏡花 『照葉狂言』 青空文庫
稀れに海上に浮たるを見るに大なる島いくつも出来たるごとくなり、是おきなの背中尾鰭などの少しづつ見ゆるなりとぞ。
— 太宰治 『津軽』 青空文庫
何よりもK君は自分の感じに頼り、その感じの由って来たる所を説明のできない神秘のなかに置いていました。
— ――或はKの溺死 『Kの昇天』 青空文庫
さて、戸の外まで帰り来たる様子なり。
— ライネル・マリア・リルケ Rainer Maria Rilke 『家常茶飯』 青空文庫