微醺
びくん
名詞
標準
slight intoxication
文例 · 用例
遠慮のない相手に向って放つその声には自分が世話をしている青年の手前勝手を詰る激しい鋭さが、発声口から聴話器を握っている自分の手に伝わるまでに響いたが、彼女の心の中は不安な脅えがやや情緒的に醗酵して寂しさの微醺のようなものになって、精神を活溌にしていた。
— 岡本かの子 『老妓抄』 青空文庫
」 と、お互に微醺を帶びて變に彈み立つた氣分で黄包車を驅り、再び四馬路の大通へ出たのはもう夜の一|時過ぎだつた。
— 南部修太郎 『麻雀を語る』 青空文庫
僕は新宿の駅前で、肩をたたかれ、振り向くと、れいの林先生の橋田氏が微醺を帯びて笑って立っている。
— 太宰治 『眉山』 青空文庫
若き血潮の漲ぎりに、私は微醺でも帶びた時のやうにノンビリした心地になツた。
— 三島霜川 『虚弱』 青空文庫
あるだけの酒をのんで、人の子よ、憎悪を消せ消せ消せ、ってね、むかしペルシャのね、まあよそう、悲しみ疲れたるハートに希望を持ち来すは、ただ微醺をもたらす玉杯なれ、ってね。
— 太宰治 『人間失格』 青空文庫
そして、やがて深い惱みの色がその微醺を帶びた顏中に擴がった。
— 南部修太郎 『霧の夜に』 青空文庫
馬士は爐を圍んで冷酒一杯、微醺を買ひていづ。
— 長塚節 『草津行』 青空文庫
二本の徳利が空になつたけれど僕の心は混亂して居たので微醺をも帶びない位であつた。
— 長塚節 『開業醫』 青空文庫