水嵩
みずかさ
名詞
標準
文例 · 用例
その下を水嵩の増つた河水がどん/\流れるのが見える。
— 有島武郎 『春』 青空文庫
顧れば峡間から東方の霞沢岳連峰の木山には、どす玄い雨雲が、甘藍の大葉を巻いたように冠ぶさって、その尖端が常念一帯の脈まで、包んで来ている、雪の峡流は碧い石や黄な石をひたして、水嵩も多くなって、樺青く雪白い間を走って行くのが、遙かに瞰下されて、先は森林の底に没している。
— 小島烏水 『槍ヶ岳第三回登山』 青空文庫
門際の流に臨むと、頃日の雨で、用水が水嵩増して溢るるばかり道へ波を打って、しかも濁らず、蒼く飜って竜の躍るがごとく、茂の下を流るるさえあるに、大空から賤機山の蔭がさすので、橋を渡る時、夫人は洋傘をすぼめた。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
暗さは暗し、このごろの雨つづきで水嵩は増している。
— むらさき鯉 『半七捕物帳』 青空文庫
この二、三日は薄ら寒いような雨が降りつづいて、水嵩の増した新堀川はひえびえと流れていた。
— 大阪屋花鳥 『半七捕物帳』 青空文庫
大勢の人々が雨夜の河岸を奔走して、そこか此処かと探し廻ったが、二、三日降りつづいて水嵩の増している川の面に、お節の姿は浮かびあがらなかった。
— 大阪屋花鳥 『半七捕物帳』 青空文庫
水泳場のある材木堀も界隈の蘆洲の根方もたっぷりと水嵩を増した。
— 岡本かの子 『渾沌未分』 青空文庫
加茂川は、やや水嵩増して、ささ濁りの流勢は河原の上を八千岐に分れ下へ落ちて行く、蛇籠に阻まれる花|芥の渚の緑の色取りは昔に変りはないけれども、魚は少くなったかして、漁る子供の姿も見えない。
— 岡本かの子 『食魔』 青空文庫