崖っ縁
がけっぷち
名詞
標準
文例 · 用例
路はもう消えてしまったが、何とかして崖っ縁まで行ってみようと思って、そこではもうだいぶ深くなっている茅の茂みに踏みこむと、隠れた凹地に足をとられて、僕は何度か転び、手足の方々を擦りむいた。
— 田畑修一郎 『石ころ路』 青空文庫
あの長い石段を降りて麓の百姓家まで行けば、何か有合せの花ぐらいはあるかも知れぬと思ったが、別段親兄弟でもない人にそれほどまでに手数をするのも面倒臭かったから、崖っ縁に枝を差しのべていた山百合と一緒に、その辺に咲いている野性の花を※り取って来て、鉄柵を乗り越えて墓前に供えて置いた。
— 橘外男 『逗子物語』 青空文庫
)…… と崖ぶちの日向に立ったが、紺足袋の繕い。
— 泉鏡花 『唄立山心中一曲』 青空文庫
焼山について休んだ処で、渋茶を汲むのはさだめし皺くたの……然ういへば、来る道の阪一つ、流を近く、崖ぶちの捨石に、竹杖を、ひよろ/\と、猫背へ抽いて、齢、八十にも余んなむ、卒塔婆小町を正で見る婆さんが、ぼやり、うつむいて休んでゐた。
— 泉鏡太郎 『十和田湖』 青空文庫
泊り合わせたその宿の若い内儀が夕方近くから俄かに行方知れずになったとやらで、それがよくよく人相など聞いて見ますると、崖ぶちから身を投げたあの女にそっくりそのままで厶りましたのでな、それならばしかじか斯々じゃと言う出家の話から騒ぎが大きくなってすぐに人が飛ぶ、谷底から死骸が運ばれて来る。
— 佐々木味津三 『十万石の怪談』 青空文庫
人々は、そこの切り立った崖ぶちとこの建物とのあいだに、狭い空地いっぱいに塊った。
— 本庄陸男 『石狩川』 青空文庫
刀をヒョイと肩へ担ぎ、九十郎はツカツカと崖ぶちまで行ったが、及び腰をして覗き込んだ。
— 国枝史郎 『血煙天明陣』 青空文庫
はじめの二三歩は、小さい弟の手をひくようにして走ったが、四つ年上のわたしは、じき自分の走る面白さに夢中になって弟をのこし、道灌山と崖ぶちの柵の道とを区切っているからたちのしげみに沿って、体を内側へすこし傾かせながら大迂廻をし、ずっと道灌山の入りぐち近く逃げて来た。
— 宮本百合子 『道灌山』 青空文庫