抱き締める
だきしめる
動詞
標準
文例 · 用例
――をしっかりと、あのあらゆる力と情とをこめて、彼女を抱き締めることの回想と予想とで、血なまぐさい、汚れた、現実的な、ボーイ長の問題などは、その余地を頭の中へ置き得ようはずがないのであった。
— 葉山嘉樹 『海に生くる人々』 青空文庫
人間を愛し得る人、愛せずにはいられない人、それでいて自分の懐に入ろうとするものを、手をひろげて抱き締める事のできない人、――これが先生であった。
— 夏目漱石 『こころ』 青空文庫
そして、筆を借りてそこの壁に詩を題し、終ると傍にいる二人の小供を抱き締めるようにしてさめざめと泣いていたが、やがて孫恪の方を向いて、「これから永のお別れをします」 と言って、着ていた着物を引裂いて投げ出したのを見ると、赭顔円目の一大老猿であった。
— 田中貢太郎 『碧玉の環飾』 青空文庫
心が寒かつた……漸く自分で自分の身体を堅く抱き締めるやうにして、心覚えの道を進んで行つた……私の足許には氾濫の跡の雪に掩はれたのがあつた。
— 島崎藤村 『突貫』 青空文庫
彼は、ぐったりとした赤んぼをふところに、抱き締めるようにして、わが体熱に温めながら濠端添いに、一切の騒擾からとおいところまで逃れて来て、さて、捨石の上に腰を下ろした。
— 三上於菟吉 『雪之丞変化』 青空文庫
今まで知らなかったとても美しい嘆きのようなものが僕を抱き締める。
— 原民喜 『鎮魂歌』 青空文庫
今まで知らなかつたとても美しい嘆きのやうなものが僕を抱き締める。
— 原民喜 『鎮魂歌』 青空文庫
ある時は我と我身を抱き締めるようにして、旅の前途を思い煩いながら眺め入ったこともある部屋の硝子窓にも。
— 島崎藤村 『新生』 青空文庫