赭色
しゃしょく
名詞
標準
文例 · 用例
厚味の雲の奥で、日が茜さしたのか、東の空が一面に古代紫のように燻んだ色になった……富士の鼠色は爛れた……淡赭色の光輝を帯びたが、ほんの瞬く間でもとの沈欝に返って、ひッそりと静まった。
— 小島烏水 『白峰山脈縦断記』 青空文庫
代赭色を帯びた円い山の背を、白いただ一筋の道が頂上へ向って延びている。
— 寺田寅彦 『浅間山麓より』 青空文庫
きちん、と手際よく、鋤き耕やされて筋目正しくならされた岱赭色の土の面の露霜がとけて、もやもやとした白い水気が、幾条も幾条も立ち初めて太陽の面を掠めたり、斜な光線にからんだりする。
— 岡本かの子 『かやの生立』 青空文庫
代赭色の小鉢に盛り上がった水苔から、青竹箆のような厚い幅のある葉が数葉、対称的に左右に広がって、そのまん中に一輪の花がややうなだれて立っている。
— 寺田寅彦 『病室の花』 青空文庫
千手が濱から赤岩、丁度白岩に對してゐるが、岩こそ赭色なれ、こゝも宜い景色である。
— 幸田露伴 『華嚴瀧』 青空文庫
初夏の晝の光が代赭色の傾斜一ぱいに流れて、碁盤の目なりにおかれた煙草は、濃い影を落し、くすんだ艷々しさに映えて美しかつた。
— 島木健作 『生活の探求』 青空文庫
一月の後になつて、それは勞働者の脛のやうに代赭色のつやつやした皮で張られて來た、足は白い消しゴムのやうに軟く五本の指が動くのであつた。
— 素木しづ子 『三十三の死』 青空文庫
赤かった色は醜い岱赭色に変っていた。
— 渡辺温 『赤い煙突』 青空文庫