雲取
くもとり
名詞
標準
文例 · 用例
雲取池のみぎわのベンチに、五十格好の婦人が腰かけて、ハンケチで半面をおおったまま、いつまでもじっとして池の面をながめていた。
— 寺田寅彦 『軽井沢』 青空文庫
近く甲州路の國師嶽甲武信嶽、秩父の大洞山雲取山、信州路では近く淺間が眺められ、上州路の碓氷妙義などは恰も盆石を置いたが如くに見下され、ずつとその奧、越後境に當つた大きな山脈は一齋に銀色に輝く雪を被いてゐた。
— 草鞋の話旅の話 『樹木とその葉』 青空文庫
二千十八米突の雲取山がある。
— めいろの巻 『大菩薩峠』 青空文庫
甲武信か国師か雁坂か、武甲山か三峰か、いずれがどれとも名は分からないが、奥秩父の高山が東へ向かって走ったその奥遙かに、奥多摩の雲取山が銀鼠色に、淡く煙って見える。
— 佐藤垢石 『わが童心』 青空文庫
太い平らな胴を台にして、熊の爪のように並ぶ三、四の小峰は、あれは雲取山の頂に違いない。
— 佐藤垢石 『わが童心』 青空文庫
「紀州牟婁郡大雲取ヲ過ギ口色川村ヨリ山路ニ到リ僅ニ両三根ヲ得タリ羊歯科ノ小草ニシテ全形エウラクゴケニ似テ葉背ニ数点ノ花実ヲ着ク今回発検ノ一ニシテ珍草ト賞スベキ者ナリ」 そしてその時これにコケシダの名が下され、なお一名としてヨウラクシダ、ムカデシダ、ヒメコシダならびにナンキンコシダの名も付けられた。
— 牧野富太郎 『植物記』 青空文庫
さてこれから船見峠、大雲取を越えて小口の宿まで行かうとするのであるが、僕に行けるかどうかといふ懸念があるくらゐであつた。
— 斎藤茂吉 『遍路』 青空文庫
僕などは、この遍路からたいへん勇気づけられたと謂つていい、さうして遂に大雲取も越えて小口の宿に著いたのであつた。
— 斎藤茂吉 『遍路』 青空文庫