菽
菽
名詞
標準
文例 · 用例
が、家内の財布じりに當つて見て、安直な鯛があれば、……魴※でもいゝ、……希くは菽乳羮にしたい。
— 泉鏡太郎 『湯どうふ』 青空文庫
左岸の農夫も菽を種ゑ、右岸の農夫も菽を作つた。
— 幸田露伴 『努力論』 青空文庫
菽科植物が連作を忌むのは、其の土壤の養分を吸收し盡すからであるか、或は該植物の發育の有力原因たる一種のバクテリヤ類の乏少に本づくのであるか知らぬが、いづれにしても内的要求が存在して、そして新地に身を置きたがるのである。
— 幸田露伴 『努力論』 青空文庫
人と菽とを同一に論ずることは出來ぬが、三代以上純粹の倫敦人は漸く羸弱に傾くといふ説の生じたるが如き事實は、たゞに都會生活の不良なる事を語るのみでは無く、人が或る状態に繩縛釘着せらるゝことを幸とせずして、新に就き舊を去るを幸とする内的要求に左右さるゝところの有ることを語つて居るのでは有るまい歟。
— 幸田露伴 『努力論』 青空文庫
成程叔母は賢婦でも無い、烈女でもない、文三の感情、思想を忖度し得ないのも勿論の事では有るが、シカシ菽麦を弁ぜぬ程の痴女子でもなければ自家独得の識見をも保着している、論事矩をも保着している、処世の法をも保着している。
— 二葉亭四迷 『浮雲』 青空文庫
サアサア、がたがた顫えなくても僕が暖めてやる」 それは、咳嗽菽豆に似た清潔好きな小草で、塵がはいると咳嗽のようなガスをだす。
— 天母峰 『人外魔境』 青空文庫
其の切り端は其の翌朝各自が自分の田畑をぐるりと廻つては菽や稻の穗や其の他の作物を佛へ供へるのであるが、佛も其の朝野廻りに出るのだといふので其佛の笠に供へるのだといふのである。
— 長塚節 『土』 青空文庫
茶店のうしろには疎らな桑の立木があつて其間に菽が作つてある。
— 長塚節 『鉛筆日抄』 青空文庫