杣道
そまみち
名詞
標準
文例 · 用例
私は手にしてゐた參謀本部の地圖に大體黒髮山らしいものの印をつけておいたが、その山の中はまださほど深いとも思はれないのに、小さな杣道が多くて、私にはすぐその地圖が何んの役にも立たない事を知つた。
— 堀辰雄 『黒髮山』 青空文庫
空には月がありますが、木の葉が厚く茂っているので、とても下草までは届かない、さながら深山の杣道といった体に、ずっと上の方へつづいている。
— 久生十蘭 『魔都』 青空文庫
「何処へ行くのだ、いきなり藪から顔なんか出して、驚くじゃないか」「藪から棒でなくてよかったでしょう」「洒落を言うな、――俺は少し急ぐことがある」 山浦丈太郎はお滝をかきのけて、箱根笹の藪へ――杣道を辿って飛込もうとするのです。
— 野村胡堂 『大江戸黄金狂』 青空文庫
その間に山浦丈太郎の姿は、心得切った杣道を、谷の方へ降りて行った様子、此処からはもう何んにも見えません。
— 野村胡堂 『大江戸黄金狂』 青空文庫
道はたった二本、今龍之助の来たのと丁度反対の方へ伸びて居る杣道を、滅茶滅茶に駆けました。
— 野村胡堂 『大江戸黄金狂』 青空文庫
何処まで行っても箱根笹の海で、その間を縫う杣道は、からかったように、ヒョックリ元の場所へ龍之助を導いて来るのです。
— 野村胡堂 『大江戸黄金狂』 青空文庫
「もう陽が落ちるぜ、辻堂の前へ行って待ってるが宜いや、あばよ」 ヒラリと身を翻すと、屏風岩から一足|飛に降りて、あっと言う間もなく、小僧の影は杣道に消えました。
— 野村胡堂 『大江戸黄金狂』 青空文庫
往来とも黒谷の谿流に沿った杣道をとるので、まだ途中で人にであったこともないと云った。
— 山本周五郎 『泥棒と若殿』 青空文庫