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瘡痕

そうこん
名詞
1
標準
文例 · 用例
僕には自分に靡かない女を無理に抱く喜こびよりは、相手の恋を自由の野に放ってやった時の男らしい気分で、わが失恋の瘡痕を淋しく見つめている方が、どのくらい良心に対して満足が多いか分らないのである。
夏目漱石 彼岸過迄 青空文庫
頸部には荒々しい絞殺の瘡痕が見え、土色に変色した局部の皮膚は所々破れて少量の出血がタオル地の寝巻の襟に染み込んでいた。
大阪圭吉 デパートの絞刑吏 青空文庫
軽薄ではあるが太く荒々しいあの瘡痕は、明かにナイフその他の金属類に依って与えられたものでなく、鈍重で粗雑なものであり、且つ又掌中に擦過傷を与えた兇器或は同性質の兇器なる事を暗示する。
大阪圭吉 デパートの絞刑吏 青空文庫
何故なら、加えられた力の量的な差こそあれ、これらの擦過傷はあの頸部胸部の絞殺瘡痕に対して質的な共通点を持っているからだ。
大阪圭吉 デパートの絞刑吏 青空文庫
従って私は、これらの個々の事実の検討から、私の分類した三つの瘡痕に加えられたそれぞれの兇器が、犯行に使用された唯一の兇器である事に帰納する。
大阪圭吉 デパートの絞刑吏 青空文庫
何事ぞ、今国家刑罰権の恩恵の為めに、四十日と云ふ豊かな安息時を監獄の一室に与へられ、青年基督の生涯に照して静かに我が六十年の苦難の瘡痕を点検し、更に我が真使命の何処に存在するかを黙想することが出来た。
木下尚江 臨終の田中正造 青空文庫
ずっと下って天保年間、東両国に小屋を出した目吉の化物屋敷と、変死人見世物は、年代記物になるほどの人気を呼びましたが、奥山の化物屋敷は、それよりずっと前で、興行元は轟の権三、四十そこそこの浪人者上がり、額の左口に物凄い瘡痕のある、その仲間では顔の利いた男でした。
幽霊にされた女 銭形平次捕物控 青空文庫
メスを入れられる痛さは瞬間的なものであり、瘡痕のかさぶたが取れるまでもさして時日はかからない。
山本周五郎 青べか物語 青空文庫