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手炉

しゅろ
名詞
1
標準
文例 · 用例
袋棚と障子との片隅に手炉を囲みて、蜜柑を剥きつつ語ふ男の一個は、彼の横顔を恍惚と遙に見入りたりしが、遂に思堪へざらんやうに呻き出せり。
尾崎紅葉 金色夜叉 青空文庫
予て用意したれば、海老茶の紋縮緬の※の傍に七宝焼の小判形の大手炉を置きて、蒔絵の吸物膳をさへ据ゑたるなり。
尾崎紅葉 金色夜叉 青空文庫
その言の如く暫し待てども出で来ざれば、又|巻莨を取出しけるに、手炉の炭は狼の糞のやうになりて、いつか火の気の絶えたるに、檀座に毛糸の敷物したる石笠のラムプのしつ。
尾崎紅葉 金色夜叉 青空文庫
如何に言釈くべきか、如何に処すべきかを思煩へる貫一は艱しげなる顔を稍内向けたるに、今はなかなか悪怯れもせで満枝は椅子の前なる手炉に寄りぬ。
尾崎紅葉 金色夜叉 青空文庫
然し貴方も間さん、随分お解りに成りませんのね」「いいや、僕は解つてゐます」「ええ、解つてゐらつしやりながら些ともお解りにならないのですから、私も益す解らなくなりますですから、さう思つてゐらつしやいまし」 満枝は金煙管に手炉の縁を丁と拍ちて、男の顔に流眄の怨を注ぐなり。
尾崎紅葉 金色夜叉 青空文庫
机頭手炉を擁して過去の実験を想ひ起すも可なり。
正岡子規 俳諧大要 青空文庫
――それ、筑前に褥をとらせよ、寒いから手炉を与えよ、茶よりも、酒がよかろう、まだ夕食は前かすんだか――などという細々しいことまで、左右に命じ、彼にたずね、さながら親身の弟でも迎えてくれるようだった。
第六分冊 新書太閤記 青空文庫
鳩みたいな眼を見あわせて、暗にそう囁き合っているような容子だし、お市の方も、名玉の香炉のごとく、端厳として、飽くまで麗しくはあるが、冷やかに、「いらせられませ」 と、わずかに、銀の籠目の火屋を掛けた手炉の端をそっと頒つぐらいなものだった。
第九分冊 新書太閤記 青空文庫