曲路
きょくろ
名詞
標準
winding road
文例 · 用例
熱海へ下る九十九折のピンヘッド曲路では車体の傾く度に乗合の村嬢の一団からけたたましい嬌声が爆発した。
— 寺田寅彦 『箱根熱海バス紀行』 青空文庫
大陸序曲路傍にねむる戰爭畫報を見てひた疲れ、ああ、このごと路の端にねむる人、命なり、赤き陽に、こんこんとうち伏しぬ。
— 北原白秋 『新頌』 青空文庫
虎一生一乳、乳必双虎と『類函』にも見ゆ、また人これに遇うもの敵勢を作ししばしば引いて曲路に至りすなわち避け去るべし。
— 虎に関する史話と伝説民俗 『十二支考』 青空文庫
日光、雨滴に映じて虹生ずるごとく一〇〇―一〇二【これ】空氣より成れる新しき體【影】ombra 又亡靈の義あればなり一〇六―一〇八【あやしとする事】第六圈の魂の痩すること一〇九―一一一【最後の曲路】第七圈。
— LA DIVINA COMMEDIA 『神曲』 青空文庫
兎口から湯本の道は、片側が逞しい山の腹、片側が流れの色も定かに見えぬ断崖のあひだをうねうねと辿るところで、九十九折の山径であるが、もはや温泉も近づいた、とある曲路に差しかかつたとき、突然頭上の叢から頭以上の大いさのある岩石が風を切つて落ちてきた。
— 坂口安吾 『逃げたい心』 青空文庫
石の落ちてきた曲路までなんとなく行つてみたいと思ひながら、蒲原氏はふとただ一人温泉をさまよひでたが、女のゐたと思はれる繁みの上へ坐つてみたり、辺りの木暗い叢をうろついてみたい想念は意外に強いことが分つた。
— 坂口安吾 『逃げたい心』 青空文庫
来る路に、龍然が残骸をねせたあの曲路でも、二人は休まずに通りすぎた。
— 坂口安吾 『黒谷村』 青空文庫
ひろびろと見晴らしのいい曲路へ出ると急に自分の心を拾ひ上げたやうになるものだが、余りの広さに極度に視線を狼狽させた男達は、慌ただしく渺々たる山波を仰いで大いなる壮快を繕ひ乍ら、何ものとも知らぬものへちらめく呪ひを感じたり、谷底へ奇怪な戦慄を覚えたり、喚きたくなつたりした。
— 坂口安吾 『小さな部屋』 青空文庫