猿眼
さるがん
名詞
標準
文例 · 用例
その代わりおそいだろう」 沢庵を洗い立てたるように色揚げしたる編片の古帽子の下より、奴は猿眼を晃かして、「ものは可試だ。
— 泉鏡花 『義血侠血』 青空文庫
」 あたかも、差置いた洋傘の柄につながった、消炭で描いた棒を視めて、虚気に、きょとんとする処へ、坂の上なる小藪の前へ、きりきりと舞って出て、老人の姿を見ると、ドンと下りざまに大な破靴ぐるみ自転車をずるずると曳いて寄ったは、横びしゃげて色の青い、猿眼の中小僧。
— 泉鏡花 『白金之絵図』 青空文庫
童は猿眼で稚いのを見ると苦笑をして、「おゝ!
— 泉鏡花 『山の手小景』 青空文庫
」 小児等は同じように顔を合せて、猿眼に、猫の目、上り目、下り目、団栗目、いろいろなのがぱちくるのみ。
— 泉鏡花 『日本橋』 青空文庫
愛吉は肩をすぼめて、「その途端に私等は雛壇が滅茶に崩れるんだと思いましたね、火事だ、火事だと、天井の辺で喚いたと思うと、」 愛吉は穏かならぬ猿眼で、きょろきょろと四辺を見たが、たちまち衝と立上った。
— 泉鏡花 『三枚続』 青空文庫
要こそあれ滅多|当に拳を廻して、砂煙の渦くばかり、くるくる舞して働きながら、背後から割って出て、柳屋の店頭に突立った、蚰蜒眉の、猿眼の、豹の額の、熟柿の呼吸の、蛇の舌の、汚い若衆を誰とかする、紋床の奴愛吉だ。
— 泉鏡花 『三枚続』 青空文庫
江戸じゅうの手先が、猿眼をして探索にかかったが、毎日のようにお役向きが急死するばかりで、何が何やら、さっぱり眼鼻がつかないのだ。
— 林不忘 『つづれ烏羽玉』 青空文庫
けれども、義経記を見ると、義経は色は白いが、猿眼で歯が出てゐると書いて居る。
— 折口信夫 『「八島」語りの研究』 青空文庫