浦々
うらうら
名詞
標準
文例 · 用例
津々浦々到る処、同じ漁師の世渡りしながら、南は暖に、北は寒く、一条路にも蔭日向で、房州も西向の、館山北条とは事かわり、その裏側なる前原、鴨川、古川、白子、忽戸など、就中、船幽霊の千倉が沖、江見和田などの海岸は、風に向いたる白帆の外には一重の遮るものもない、太平洋の吹通し、人も知ったる荒磯海。
— 泉鏡花 『海異記』 青空文庫
津々浦々の渡鳥、稲負せ鳥、閑古鳥。
— 泉鏡花 『春昼』 青空文庫
沼津に向って、浦々の春遅き景色を馳らせる、……土地の人は(みっと)と云う三津の浦を、いま浪打際とほとんどすれすれに通る処であった。
— 泉鏡花 『半島一奇抄』 青空文庫
津々浦々、都、村、里、どこを聞いても、あこがれる唄はない。
— 泉鏡花 『草迷宮』 青空文庫
あとの事は何も知らず、その時から、津々浦々をさすらい歩行く、門附の果敢い身の上。
— 泉鏡花 『歌行燈』 青空文庫
近ごろは、独逸、仏蘭西はつい隣りで、マルセイユ、ハンブルク、アビシニヤごときは津々浦々の中に数えられそうな勢。
— 泉鏡花 『燈明之巻』 青空文庫
文化に於いて、はたまた産業に於いて然り、かしこくも明治大帝の教育に関する大御心はまことに神速に奥州の津々浦々にまで浸透して、奥州人特有の聞きぐるしき鼻音の減退と標準語の進出とを促し、嘗ての原始的状態に沈淪した蒙昧な蛮族の居住地に教化の御光を与へ、而して、いまや見よ云々。
— 太宰治 『津軽』 青空文庫
「そのころ渡船を業となすもの多きうちにも、源が名は浦々にまで聞こえし。
— 国木田独歩 『源おじ』 青空文庫