捏ね返す
こねかえす
動詞
標準
文例 · 用例
そういう感情は、たとえ仮装のものとはいえ、活溌であるだけに、流れるような汗と共に、心身を根底から捏ね返す。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
――「そう頭からがみがみいわないで、もっと解るようにいって聞かして下すったら好いでしょう」「解るようにいおうとすれば、理窟ばかり捏ね返すっていうじゃないか」「だからもっと解りやすいように。
— 夏目漱石 『道草』 青空文庫
友人と一緒に捏ねかえす人込みの銀座へ出て、風月で飯を食ったことや、元日に歌舞伎で「関の扉」を見て、二日の朝|夙くにけたたましいベルに起こされ、妻がにわかに仆れたことを知り、急いで帰ってみると、その午後はすでに泣き縋る子供の声を後にして、死んで行く彼女であったことも、憶い出したくはなかった。
— 徳田秋声 『仮装人物』 青空文庫
なかには、海豹、海驢、緑海豹など十匹ほどのものが、鰭で打ちあいウオーウオーと咆えながら、狭いなかを捏ねかえすような壮観だ。
— 遊魂境 『人外魔境』 青空文庫
知り合いの青年らのかなり柔軟な思想を、随意に捏ねかえすことに慣れていた。
— JEAN-CHRISTOPHE 『ジャン・クリストフ』 青空文庫
唐桟の素袷に高足駄を突っ掛けた勘弁勘次は、山谷の伯父の家へ一泊しての帰るさ、朝帰りのお店者の群の後になり先になり、馬道から竜泉寺の通りへ切れようとして捏返すような泥濘を裏路伝いに急いでいた。
— のの字の刀痕 『釘抜藤吉捕物覚書』 青空文庫
早や金色に晴れ渡った空の下に、茅場町の大通りは捏返すようだった。
— 三つの足跡 『釘抜藤吉捕物覚書』 青空文庫
天気つづきの冬の日といえども山の手一面赤土を捏返す霜解も何のその。
— 一名 東京散策記 『日和下駄』 青空文庫