鵝
鵝
名詞
標準
文例 · 用例
油紙の天幕には、チロチロと漣の刻むような光りがする、岩石の間に、先刻捨てた尻拭き紙までが、真赤にメラメラと燃えている、この窪地一帯に散乱する岩石の切れ屑は、柔らかく圭角を円められて、赤い天鵝絨色が潮しはじめた。
— 小島烏水 『谷より峰へ峰より谷へ』 青空文庫
さらさらひらひら、と低く呟いてその形容を味わい楽しむみたいに眼を細めていらっしゃる、かと思うと急に、いや、まだ足りない、ああ、雪は鵝毛に似て飛んで散乱す、か。
— 太宰治 『千代女』 青空文庫
古い文章は、やっぱり確実だなあ、鵝毛とは、うまく言ったものですねえ、和子さん、おわかりになったでしょう?
— 太宰治 『千代女』 青空文庫
小屋から出た鵝が、があがあ鳴きながら、河ふちへ這って行く。
— 黒島伝治 『パルチザン・ウォルコフ』 青空文庫
天鵝絨の括枕を横へ取って、足を伸して裙にかさねた、黄縞の郡内に、桃色の絹の肩当てした掻巻を引き寄せる、手が辷って、ひやりと軽くかかった裏の羽二重が燃ゆるよう。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
」 とさも羨しそうに小芳が云うと、お妙はフト打仰向いて、目を大きくして何か考えるようだったが、もう一つの袂から緋天鵝絨の小さな蝦蟇口を可愛らしく引出して、「小母さん、これを上げましょう。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
母も後毛を掻上げて、そして手水を使って、乳母が背後から羽織らせた紋着に手を通して、胸へ水色の下じめを巻いたんだが、自分で、帯を取って〆ようとすると、それなり力が抜けて、膝を支いたので、乳母が慌て確乎抱くと、直に天鵝絨の括枕に鳩尾を圧えて、その上へ胸を伏せたですよ。
— 泉鏡花 『薬草取』 青空文庫
」 とお千さんは、伊達巻一つの艶な蹴出しで、お召の重衣の裙をぞろりと引いて、黒天鵝絨の座蒲団を持って、火鉢の前を遁げながらそう言った。
— 泉鏡花 『売色鴨南蛮』 青空文庫