涌
ゆう
名詞
標準
文例 · 用例
箱根は二十年も昔水産関係の用向きで小田原へ行ったついでに半日の暇を盗んで小涌谷まで行ったのと、去年の春長尾峠まで足を使わない遠足会の仲間入りをした外にはほとんど馴染のない土地である。
— 寺田寅彦 『箱根熱海バス紀行』 青空文庫
小田原ではバスが待っていたが、箱根町行は満員なので空席のあった小涌谷行に乗込んだ。
— 寺田寅彦 『箱根熱海バス紀行』 青空文庫
小涌谷辺は桜が満開で遊山の自動車が輻湊して交通困難であった。
— 寺田寅彦 『箱根熱海バス紀行』 青空文庫
或いはあの歌の主は、かねがねあまりに自分が歌が下手なので、思いあまって、こんな人里はなれた山奥でひそかに歌の修行をしているのかも知れない、と思ったら、同様に歌の下手な私には、そぞろその歌の主がなつかしくなって来て、ひとめそのお姿を拝見したいという慾望が涌然と起って来た。
— 太宰治 『惜別』 青空文庫
脂汗が、じつとりと額に涌いて出る。
— 太宰治 『津軽』 青空文庫
踊り屋台、手古舞、山車、花火、三島の花火は昔から伝統のあるものらしく、水花火というものもあって、それは大社の池の真中で仕掛花火を行い、その花火が池面に映り、花火がもくもく池の底から涌いて出るように見える趣向になって居るのだそうであります。
— 太宰治 『老ハイデルベルヒ』 青空文庫
親爺のちぎれた趾からは、紅い血が、ガーゼで拭かれたあとへ、スッスッと涌きあがった。
— 黒島傳治 『武装せる市街』 青空文庫
――と、反抗的な熱情が涌き上って来るのを止めることが出来なかった。
— 黒島傳治 『氷河』 青空文庫