焼け土
やけつち
名詞
標準
文例 · 用例
高嶽の絶頂は噴火口から吐き出す水蒸気が凝って白くなっていたがそのほかは満山ほとんど雪を見ないで、ただ枯れ草白く風にそよぎ、焼け土のあるいは赤きあるいは黒きが旧噴火口の名残をかしこここに止めて断崖をなし、その荒涼たる、光景は、筆も口もかなわない、これを描くのはまず君の領分だと思う。
— 国木田独歩 『忘れえぬ人々』 青空文庫
震災後まだ草も生え込み得ない焼け土の空地が到る処にあって、甚だしきに到っては、震災当時この辺に漲っていた死骸のにおいを残しているところもある。
— 夢野久作 『街頭から見た新東京の裏面』 青空文庫
なにしろ、こうして見わたしたところ、まだ誰も店をひらいていないじゃないか」 源一は、今日から彼の所有となった一坪の焼け土の上に立って、あたりをぐるっと見まわした。
— 海野十三 『一坪館』 青空文庫
杜は焼け土の上を履んで、丸の内有楽町にあった会社を探した。
— 海野十三 『棺桶の花嫁』 青空文庫
よって一同庭へ下り、月光をかりてここかしことさがし見るに、その形、橙実ほどの焼け土の一塊が、大樹の根より三、四尺離れたる所に落ちてありしを見いだしたり、云云。
— 井上円了 『おばけの正体』 青空文庫
世を救う力もない者が世を救おうとし、人を救う力もない者が人を救おうとした結果だ、仏陀の見せしめだ……」「だが、安楽房、あんな物は焼けても、また、焼け土の下から若い草は萌えるよ、見ろ、念仏門の胚子が、あんなに火になって、空へ舞うじゃないか」「殉教者となるのは、元より覚悟のことだ。
— 吉川英治 『親鸞』 青空文庫
そして、それを実行するために、四人は焼け土を踏んで剣山へ急ぐのだった。
— 剣山の巻 『鳴門秘帖』 青空文庫
火と、焼け土とが、滝となって、ざっと落ちてきた。
— 吉川英治 『雲霧閻魔帳』 青空文庫