水影
みずかげ
名詞
標準
文例 · 用例
三 どの位|経ったか、――それっきり河原は、音という音が全く死んで、そよとの水影さえも動かなかった。
— 佐々木味津三 『流行暗殺節』 青空文庫
水影に透してじっと見つめていると、海老は尻尾から先に、浅く砂や藻草にもぐって、やがて背全体をも隠してしまうが、鼻眼鏡のような柄のついた二つの眼だけは外に出して、それとなく自分を驚かせた闖入者を見まもっている。
— 薄田泣菫 『艸木虫魚』 青空文庫
水の上では、朝日がちらちら水影を橋の脚にもつらせていた。
— 横光利一 『上海』 青空文庫
亀が泳ぐと、水面から輝り返された明るい水影が、乾いた石の上で揺れていた。
— 横光利一 『春は馬車に乗って』 青空文庫
やがては、乙女の眉びきのごと、はた天つ水影の押伏せて見ゆる向津国も御軍の威に懼れ服ひけむをおもふ時、われは端なくも土蜘蛛、熊襲なんどの栄えたりし古の筑紫に身をおくがごとくて、遽に神の御前を去りあへざりき。
— 蒲原有明 『松浦あがた』 青空文庫
やがて尿意をもよほしたので靜かに寢臺をすべり下り、久しぶりに普通の便器に用を足したが、その便器のなかに澱んだ水かげに、彼ははじめてやつれた自分の顏を映して見る事ができたのであつた。
— 島木健作 『癩』 青空文庫
やがて尿意をもよおしたので静かに寝台をすべり下り、久しぶりに普通の便器に用を足したが、その便器のなかに澱んだ水かげに、彼ははじめてやつれた自分の顔を映して見ることができたのであった。
— 島木健作 『癩』 青空文庫
墓地は無縁の草いきれ、また、ねもごろの水かげろふ。
— 北原白秋 『海豹と雲』 青空文庫