革鞄
かわかばん
名詞
標準
文例 · 用例
大事に革鞄を抱きながら、車掌が甲走った早口で、「御免なさい、何ですか、何ですか。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
車掌台からどやどやと客が引込む、直ぐ後へ――見張員に事情を通じて、事件を引渡したと思われる――車掌が勢なく戻って、がちゃりと提革鞄を一つ揺って、チチンと遣ったが、まだ残惜そうに大路に半身を乗出して人だかりの混々揉むのを、通り過ぎ状に見て進む。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
またほんとうに掏られたんだか何だか知れたもんじゃありません、どうせ間抜けた奴なんでさあね、と折革鞄を抱え込んだ、どこかの中小僧らしいのが、隣合った田舎の親仁に、尻上りに弁じたのである。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
大な支那革鞄を横倒しにして、えいこらさと腰を懸けた。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
重荷に小附の折革鞄、慾張って挟んだ書物の、背のクロオスの文字が、伯林の、星の光はかくぞとて、きらきら異彩を放つのを、瓢箪式に膝に引着け、あの右角の、三等待合の入口を、叱られぬだけに塞いで、樹下石上の身の構え、電燈の花見る面色、九分九厘に飲酒たり矣。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
其のために東京から故郷に歸る途中だつたのでありますが、汚れくさつた白絣を一|枚きて、頭陀袋のやうな革鞄一つ掛けたのを、玄關さきで斷られる處を、泊めてくれたのも、螢と紫陽花が見透しの背戸に涼んで居た、其のお米さんの振向いた瞳の情だつたのです。
— 泉鏡花 『雪靈記事』 青空文庫
雨戸の中は、相州西鎌倉|乱橋の妙長寺という、法華宗の寺の、本堂に隣った八畳の、横に長い置床の附いた座敷で、向って左手に、葛籠、革鞄などを置いた際に、山科という医学生が、四六の借蚊帳を釣って寝て居るのである。
— 泉鏡花 『星あかり』 青空文庫
その親たちの位牌を、……上野の展覧会の今最中、故郷の寺の位牌堂から移して来たのが、あの、大な革鞄の中に据えてあります。
— 泉鏡花 『鷭狩』 青空文庫