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鵝絨

鵝絨
名詞
1
標準
文例 · 用例
油紙の天幕には、チロチロと漣の刻むような光りがする、岩石の間に、先刻捨てた尻拭き紙までが、真赤にメラメラと燃えている、この窪地一帯に散乱する岩石の切れ屑は、柔らかく圭角を円められて、赤い天鵝絨色が潮しはじめた。
小島烏水 谷より峰へ峰より谷へ 青空文庫
鵝絨の括枕を横へ取って、足を伸して裙にかさねた、黄縞の郡内に、桃色の絹の肩当てした掻巻を引き寄せる、手が辷って、ひやりと軽くかかった裏の羽二重が燃ゆるよう。
泉鏡花 婦系図 青空文庫
」 とさも羨しそうに小芳が云うと、お妙はフト打仰向いて、目を大きくして何か考えるようだったが、もう一つの袂から緋天鵝絨の小さな蝦蟇口を可愛らしく引出して、「小母さん、これを上げましょう。
泉鏡花 婦系図 青空文庫
母も後毛を掻上げて、そして手水を使って、乳母が背後から羽織らせた紋着に手を通して、胸へ水色の下じめを巻いたんだが、自分で、帯を取って〆ようとすると、それなり力が抜けて、膝を支いたので、乳母が慌て確乎抱くと、直に天鵝絨の括枕に鳩尾を圧えて、その上へ胸を伏せたですよ。
泉鏡花 薬草取 青空文庫
」 とお千さんは、伊達巻一つの艶な蹴出しで、お召の重衣の裙をぞろりと引いて、黒天鵝絨の座蒲団を持って、火鉢の前を遁げながらそう言った。
泉鏡花 売色鴨南蛮 青空文庫
」と片手に猪口を取りながら、黒天鵝絨の蒲団の上に、萩、菖蒲、桜、牡丹の合戦を、どろんとした目で見据えていた、大島揃、大胡坐の熊沢が、ぎょろりと平四郎を見向いて言うと、笑いの虫は蕃椒を食ったように、赤くなるまで赫と競勢って、「うはははは、うふふ、うふふ。
泉鏡花 売色鴨南蛮 青空文庫
さまで重荷ではないそうで、唐草模様の天鵝絨の革鞄に信玄袋を引搦めて、こいつを片手。
泉鏡花 歌行燈 青空文庫
鎌倉、横須賀は、勤めにも参った事です―― 時に、乗込みましたのが、二等と云う縹色の濁った天鵝絨仕立、ずっと奥深い長い部屋で、何とやら陰気での、人も沢山は見えませいで、この方、乗りました砌には、早や新聞を顔に乗せて、長々と寝た人も見えました。
泉鏡花 白金之絵図 青空文庫