錨綱
いかりづな
名詞
標準
文例 · 用例
三ノ池は一ノ他の半分ほどしかないが、木が茂って松蘿が、どの枝からも腐った錨綱のようにぶら下っている、こればかりではない、葛、山紫藤、山葡萄などの蔓は、木々の裾から纏繞いて翠の葉を母木の胸に翳し、いつまでもここにいてと言わぬばかりに取り縋っている。
— 小島烏水 『梓川の上流』 青空文庫
さりとも小僧のみぎりはの、蒼い炎の息を吹いても、素奴色の白いはないか、袖の紅いはないか、と胴の間、狭間、帆柱の根、錨綱の下までも、あなぐり探いたものなれども、孫子は措け、僧都においては、久しく心にも掛けませいで、一向に不案内じゃ。
— 泉鏡花 『海神別荘』 青空文庫
半年ほどの交渉のうちに、若い画家は、かの女の持つ稀有の哀愁を一生|錨綱にして身に巻きつけ、「真面目なるもの」に落付き度いといひ出した。
— 岡本かの子 『川』 青空文庫
木村も葉子も不意を打たれて気先をくじかれながら、見ると、いつぞや錨綱で足をけがした時、葉子の世話になった老水夫だった。
— 有島武郎 『或る女』 青空文庫
父は舳の錨綱を放して棹を待つた。
— 加能作次郎 『厄年』 青空文庫
そのうちにも錨綱は、不思議なゆれかたをして、空中を大蛇のようにのたうちます。
— 海野十三 『怪塔王』 青空文庫
といふやうな意味のことを云つて錨綱を体に巻いて海にはひつたやうなところは、やはり僕は日本人の伝習感情として、何うにもしやうがないものらしい。
— 葛西善藏 『椎の若葉』 青空文庫
といふやうな意味のことを云つて錨綱を體に卷いて海には入つたやうなところは、やはり僕は日本人の傳習感情として、何うにもしやうがないものらしい。
— 葛西善藏 『椎の若葉』 青空文庫