断切
だんせつ
名詞
標準
文例 · 用例
銑吉とても、ただ怯かしばかりでもなさそうな、秘密と、奇異と、第一、人気のまるでないその祠に、入口に懸った薙刀を思うと、掛釘が錆朽ちていまいものでもなし、控えの綱など断切れていないと限らない。
— 泉鏡花 『神鷺之巻』 青空文庫
その爪の切入るごとに、巌はもろくぼろぼろと欠けて、喰い入り喰い入り、見る内に危く一重の皮を残して、まさに断切れて逆さまに飛ばんとする。
— 泉鏡花 『黒百合』 青空文庫
雨の音が一きわ騒がしくなって、風が煙突に呻り、庭園の方では木の枝の断切れて飛ぶ音がする。
— モーリス・ルヴェル Maurice Level 『犬舎』 青空文庫
「大事はない、早く血を拭いて創をよく巻いてやれ」 竜之助はあり合せた晒木綿の断切れを取ってやる。
— 鈴鹿山の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
それも、老人や子供たちの姿は見えなくて、どれもこれも陽焼した、ひと眼で軍人だと知れるような、体格のいい青年たちばかりで、みなひどく切迫した顔つきをして、断切音の多い近東の言葉で、互いに何か叫び交わしていた。
— 久生十蘭 『墓地展望亭』 青空文庫
「鉄鎖を断切る奴隷の前に、自由人の前に戦慄するなかれ」と。
— AUX JEUNES GENS 『青年に訴う』 青空文庫
あのひとがあれを持っていったのは、二人の思い出をつなぐためではなく断切るためだ、あの鏡には古い思い出がある。
— 山本周五郎 『落ち梅記』 青空文庫
古い思い出を断切るために、心残りをなくすために持っていったものだ、それをぬけがらとは」 金之助の眼から涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。
— 山本周五郎 『落ち梅記』 青空文庫