草昧
そうまい
名詞
標準
文例 · 用例
出来るだけ伝統的の型を離れるには一度あらゆるものを破壊し投棄して原始的の草昧時代に帰り、原始人の眼をもって自然を見る事が必要である。
— 寺田寅彦 『津田青楓君の画と南画の芸術的価値』 青空文庫
これは映画の草昧時代において、波の寄せては砕けるさまがそのままに映るのを見せて喜ばせたと同様に、トーキーというものにまだ一度も接したことのない観客に、丸髷の田中絹代嬢の「ネー、あなたあ」というような声を聞かせて喜ばせようというだけの目的であるのならばその企図は明瞭に了解される。
— 寺田寅彦 『映画雑感(1)』 青空文庫
人類がまだ草昧の時代を脱しなかったころ、がんじょうな岩山の洞窟の中に住まっていたとすれば、たいていの地震や暴風でも平気であったろうし、これらの天変によって破壊さるべきなんらの造営物をも持ち合わせなかったのである。
— 寺田寅彦 『天災と国防』 青空文庫
まさかお父う様だって、草昧の世に一国民の造った神話を、そのまま歴史だと信じてはいられまいが、うかと神話が歴史でないと云うことを言明しては、人生の重大な物の一角が崩れ始めて、船底の穴から水の這入るように物質的思想が這入って来て、船を沈没させずには置かないと思っていられるのではあるまいか。
— 森鴎外 『かのように』 青空文庫
“〔Oh, le bon temps, que ce sie`cle de fer!〕”(おお、この草昧の時代の、楽しかりしころよ!
— WILLIAM WILSON 『ウィリアム・ウィルスン』 青空文庫
これらの神話は口碑によって草昧の時代から文化の進んだ時代まで保存されてきた。
— スワンテ・アウグスト・アーレニウス Svante August Arrhenius 『宇宙の始まり』 青空文庫
そもそも孔子の時代は明治を去ること二千有余年、野蛮|草昧の世の中なれば、教えの趣意もその時代の風俗人情に従い、天下の人心を維持せんがためには、知りてことさらに束縛するの権道なかるべからず。
— 福沢諭吉 『学問のすすめ』 青空文庫
時は初冬の草昧で戸外は一面靄立ち罩め人の姿さえ朧ろである。
— ―破獄の志士赤井景韶― 『国事犯の行方』 青空文庫