脇目も振らず
わきめもふらず
表現
標準
without looking aside
文例 · 用例
上り下りの電車がホームに到着するごとに、たくさんの人が電車の戸口から吐き出され、どやどや改札口にやって来て、一様に怒っているような顔をして、パスを出したり、切符を手渡したり、それから、そそくさと脇目も振らず歩いて、私の坐っているベンチの前を通り駅前の広場に出て、そうして思い思いの方向に散って行く。
— 太宰治 『待つ』 青空文庫
「当分行きさえしなかったら……そうして自分は自分の道さえ脇目も振らず励んでいたら……」 ほんとうにそんな師匠のことなんか考えているよりも、いま圓朝の目の前には進まねばならない「道」が菫たんぽぽ咲きみだれて、春を長閑とあけそめていた。
— 正岡容 『小説 圓朝』 青空文庫
大きなお社の鳥居の脇にはお百度石という石が立っていて、手に数取りの紙縒や竹の串をもって、脇目も振らずにそこと社殿とのあいだを、往き返りする人を毎度見かける。
— 柳田国男 『母の手毬歌』 青空文庫
じいさんに見られた柱は、まるで木のように堅くなって、足をしゃちほこばらせて、わきめもふらず進んで行き、その変なじいさんは、もう恭一のすぐ前までやってきました。
— 宮沢賢治 『月夜のでんしんばしら』 青空文庫
ぢいさんに見られた柱は、まるで木のやうに堅くなつて、足をしやちほこばらせて、わきめもふらず進んで行き、その変なぢいさんは、もう恭一のすぐ前までやつてきました。
— 宮沢賢治 『月夜のでんしんばしら』 青空文庫
その一方において、科学者や技術者たちは、その大半が工場につめて、わきめもふらずに、地球脱出用のロケットを製造することに、一生けんめいであった。
— 海野十三 『火星兵団』 青空文庫
その辺まではわきめもふらずに上って来たが、ここで歩みをゆるやかにしたものですから、呼吸もやや平調になったのでしょう。
— Ocean の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
ある日、敏ちゃんは、学校から帰りに、この犬が、やはりなにかくわえて、わきめもふらずに原っぱをかけて、あちらのすぎ林の中へゆくのを見ました。
— 小川未明 『母犬』 青空文庫