小皺
こじわ
名詞
標準
文例 · 用例
病室へ這入ると、お前の母が老年の近い小皺の寄つた顏を土氣色にして、釣り上つたやうな眼でぢつとお前の顏を見詰めてゐる姿が、私の胸を衝いた。
— 南部修太郎 『疑惑』 青空文庫
柔和な顏に落ち著きはあつたが、まばらな白髮にも、片頬の小皺にも、消し難いやうな寂しさがあつた。
— 南部修太郎 『修道院の秋』 青空文庫
ダア、ダア……」何か自分の理解の出來る音の響を心待ちに待つてゐたらしい老人は、その詞を聞きつけると顏中を小皺に笑ひ崩して、快活に頷いた。
— 南部修太郎 『霧の夜に』 青空文庫
藁布団の上に畳んだ敷布と病衣は、身体に纒われて出来た小皺と、垢や脂肪で、他人が着よごしたもののようにきたなかった。
— 黒島傳治 『氷河』 青空文庫
呉は、左の腕を捩じ曲げるように、顎の下に、も一方の手で抱き上げ、額にいっぱい小皺をよせてはいってきた。
— 黒島伝治 『国境』 青空文庫
武石は、小皺のよった、人のよさそうな、吉永の顔を思い浮べた。
— 黒島伝治 『渦巻ける烏の群』 青空文庫
羽虫が水を摶つごとに細紋起きてしばらく月の面に小皺がよるばかり。
— 国木田独歩 『武蔵野』 青空文庫
お蝶坊が忌がるのも無理はねえ」と、この不思議な話を聞いて半七はひたいに小皺をよせた。
— 奥女中 『半七捕物帳』 青空文庫