野苺
のいちご
名詞
標準
文例 · 用例
」「へんなことを言ふやうですけれども、君はまるはだかの野苺と着飾つた市場の苺とどちらに誇りを感じます。
— 太宰治 『ダス・ゲマイネ』 青空文庫
僕たちだけがまるはだかだ」「へんなことを言うようですけれども、君はまるはだかの野苺と着飾った市場の苺とどちらに誇りを感じます。
— 太宰治 『ダス・ゲマイネ』 青空文庫
ニュウグランド・ホテルの前を通って、陽の眩ゆい草原の道を真直ぐに進みながら、小さい兄妹はえんじ色にうれた野苺を見つけて、わざと草深い中を歩きながら両手にあまるほど苺を摘んだ。
— 菊池寛 『貞操問答』 青空文庫
いちご山家そだちの野苺が、麥の穗も出る夏の朝、熟れて、摘まれて、送られて、都の市に來てみれば、朝も葉末の露はなし、晝も小鳥の音は聞かず、なんぼむかしがよかろかと、西日のさした店先で、娘のやうな息をして、身の仕合せを泣いたとさ。
— 薄田泣菫 『泣菫詩抄』 青空文庫
夏の白晝野苺の葉がくれ光よけて、蜥蜴も眠れる夏の眞晝、靜かに南の窓にもたれ、黒髮ながきを思ひ慕ふ。
— 薄田泣菫 『泣菫詩抄』 青空文庫
クヴシンニコフの奴はおれの傍に坐っていやがったがね、『どうだい、君、あの野苺も摘んでやろうか!
— または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊 『死せる魂』 青空文庫
岡の畠へ通う道々妹と一緒に摘んだ野苺の黄な実を憶出しました。
— 島崎藤村 『旧主人』 青空文庫
病的に美しい旅の武士 編笠をもれた頤の色が、透明るようにあお白く、時々見える唇の色が、べにを注したように紅いのが気味悪いまでに美しく、野苺に捲きついた青大将だと、こう形容をしたところで、さらに誇張とは思われない。
— 国枝史郎 『名人地獄』 青空文庫