薬戸
やっこ
名詞
標準
文例 · 用例
向って右側の明るい窓は、この病院の薬局で、二段重ねの薬戸棚に囲まれた中央の調合台の前には、この家の養女として育って来た品夫が、白い看護婦服を着て、キチンと腰をかけていた。
— 夢野久作 『復讐』 青空文庫
新薬の広告ビラを板の上に綴じ付けて、会計簿の上にキチンと置くと、ホッと溜息をしながら眼をあげて、正面の薬戸棚の間に懸かっている大きなボンボン時計を見た。
— 夢野久作 『復讐』 青空文庫
アヤツリ人形のように真正面を見据えて、何ともいえない怯えた表情をしながら、全身をヒッソリと硬ばらせたようであったが、やがて大急ぎで足下の反射ストーブを消して、頭の上にゆらめく百|燭光のスイッチを注意深くひねると、真暗になった薬戸棚の間を音もなく廊下に辷り出た。
— 夢野久作 『復讐』 青空文庫
ホントウにこの家の案内を知っているらしく、突当りの薬戸棚の硝子戸を開いて、旧式の黒柿製の秘薬|筥を取出して調薬棚の上に置いた。
— 夢野久作 『笑う唖女』 青空文庫
頭のシンは睡むくてたまらないのに、意識だけはシャンシャンと冴え返っているような気持で彼は、正面の薬戸棚の抽出から小さなカプセルを一個取出した。
— 夢野久作 『笑う唖女』 青空文庫
それから突当りの薬戸棚の硝子戸を開いて、きょう昼間、頓野老人が持出した黒柿の秘薬箱を今一度取出して、調合棚の上に置いた。
— 夢野久作 『笑う唖女』 青空文庫
それから何もかもモト通りに直して、薬戸棚の硝子戸をピッタリと閉じた。
— 夢野久作 『笑う唖女』 青空文庫
」 そんなことを云ひながら私は、のろのろと叔父の薬戸棚の前に進んで、二三の薬品を秤にかけたり、乳鉢をかき回したりして、仰々しく一粒の丸薬を拵え(手真似)あげた。
— 牧野信一 『毒気』 青空文庫