沈丁
じんちょう
名詞
標準
文例 · 用例
」というような感慨じみた嘆声がわずかに吐息と一緒に唇を割って出ると今度は眼の裏のまぼろしに綺麗な水に濡れた自然の手洗石が見え南天の細かい葉影を浴びて沈丁花が咲いて居る。
— 岡本かの子 『巴里祭』 青空文庫
」「沈丁花の花の干したのをお風呂へ入れてあげるから入りなさい。
— 岡本かの子 『桃のある風景』 青空文庫
この中之島には亭々とした三がい松以外には源平染分けの椿、四季咲きの薔薇、黄水仙、青黄ろい春蘭、青木の深紅の実、むらさきの雲のような沈丁花などが、岩の根締めやら芝生との配合のためわたくしたちの朝飯の卓をめぐって、ところまだらに、それ/″\持前の色彩を盛り上げております。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
四方一帯、春昼の埃臭さのなかに、季節に後れた沈丁花がどんよりと槙の樹の根に咲き匂っている。
— ――二つの連作―― 『春』 青空文庫
そがなかに埋もれたる素馨のなげき、蒸し甘き沈丁のあるは刺せどもなにほどの香の痛み身にしおぼえむ。
— 北原白秋 『邪宗門』 青空文庫
D 沈丁花なまめけるわが女、汝は弾きぬ夏の日の曲、悩ましき眼の色に、髪際の紛おしろひに、緘みたる色あかき唇に、あるはいやしく肉の香に倦める猥らなる頬のほほゑみに。
— 北原白秋 『邪宗門』 青空文庫
響かふは呪はしき執と欲、ゆめもふくらに頸巻く毛のぬくみ、真白なるほだしの環そがうへに我ぞ聴く、沈丁花たぎる畑を、堪へがたき夏の日を、狂はしき甘きひびきを。
— 北原白秋 『邪宗門』 青空文庫
春はなほ見えねども、園のこころにいと甘き沈丁の苦き莟の刺すがごと沁みきたり、瓦斯の薄黄は身を投げし霊のゆめのごと水のほとりに。
— 北原白秋 『東京景物詩及其他』 青空文庫