突き入る
つきいる
動詞
標準
文例 · 用例
が、時折り突き入るように尖ってきらめくこともある。
— 岡本かの子 『決闘場』 青空文庫
山裾はどこも急な崖で 岸辺もなく海へと突き入る、 海は落ちも着かずに高波なして 雷火の空にうねっている、 湖も終わりなく広げている その何もない水面を――無に死に―― その動きない水面を――静に冷に うなだれる純白の百合を一面に。
— エドガー・A・ポオ Edger A. Poe 『ポオ異界詩集』 青空文庫
それでも、船が行先きにもり上った波に突き入ると、「おもて」の甲板を、波は自分の敷居でもまたぐように何んの雑作もなく、乗り越してきた。
— 小林多喜二 『蟹工船』 青空文庫
昭和二年のはじめには、わたしはすでに『夜明け前』の腹案を立ててはゐたが、まだ街道といふものを通して父の時代に突き入る十分な勇氣が持てなかつた。
— 島崎藤村 『桃の雫』 青空文庫
匂は心得ねど教へられし花を摘み來りて薊の中に突き入るれば、光はそを引き入れて、大なる花をおのが頭に冠り、小なる花二つは其中に各※の手を入れて手袋の如くし、頭と手二つとにて刺を押し開きつゝ、やつと薊の外に出で來りぬ。
— 正岡子規 『花枕』 青空文庫
その太い爪先がむさぼるように肉へ突き入るたびに、女は思わず歯を食いしばって、ぎりぎり――ともすれば音を立てそう。
— 林不忘 『つづれ烏羽玉』 青空文庫
単にまつり上げるのでなくて、一箇の芸術家は自分の才能をどのように生かして来たかどんな力ととり組み自身の矛盾ととりくんで来たかというその突き入るような分析、綜合、生きた人その人がそれをよんでああ自分は斯うであったかと三歎するようなもの、そういうものをつくる決心で私はとりかかって居ります。
— 一九三六年(昭和十一年) 『獄中への手紙』 青空文庫
額の眞下つんざきて酷く突き入る鋭刄は、眼※の外に眼球を飛び出でしめつ、頭蓋の裏に通れば手を張りて敵は地上に倒れ伏す。
— ILIAS 『イーリアス』 青空文庫