溶かし込む
とかしこむ
動詞
標準
文例 · 用例
この種の素質の向上と、才能の訓練は、作家が作中人物のそれぞれに自己のあるものを分ち与えるように、俳優は、それとは逆に、あらゆる文学作品に描かれた、それぞれに魅力ある人物像を、自己の血液の中に溶かし込む努力をなすべきである。
— 岸田國士 『あるニュウ・フェイスへの手紙』 青空文庫
言語ができ、文字ができ、機構ができあがってくることは、この宇宙のもつ秩序と法則を、意識の中に再確認し、その驚きを沈め、この法則の中に、生活そのものを溶かし込むことである。
— 中井正一 『図書館に生きる道』 青空文庫
私はその中にすっぽりと自分を溶かしこむこと、帰一させてしまえるのがどんなにうれしく、楽しい想像だか分からないのです。
— 一九三七年(昭和十二年) 『獄中への手紙』 青空文庫
丁度射撃の名人が、身も、心も、鉄砲も、的も、ただ一つに溶かしこむように、いわゆる苦労人は、周囲の人々を一つの気分に浸りこませて、まかり間違えば、損得の問題や、理くつの言いあいで、掴みあいにもなりかねないところを、極めてなごやかに取りさばいて行くものである。
— 下村湖人 『青年の思索のために』 青空文庫