袖引き
そでひき
名詞
標準
文例 · 用例
としとって、お前が然るべき重職に就いた時、人はお前の昔のカンニングは忘れても、落第の事は忘れず、何かと目まぜ袖引き、うしろ指さして笑います。
— 太宰治 『新ハムレット』 青空文庫
沢山の汚名を持つ私を、たちの悪い、いたずら心から、わざと鄭重に名士扱いにして、そうして、蔭で舌を出して互に目まぜ袖引き、くすくす笑っている者たちが、確かに襖のかげに、うようよ居るように思われ、私は頗る落ちつかなかったのである。
— 太宰治 『善蔵を思う』 青空文庫
頬も腕も汗ばみたる、袖引き結へる古襷は、枯野の草に褪せたれども、うら若き血は燃えんとす。
— 泉鏡太郎 『婦人十一題』 青空文庫
「いらっしゃい」と一人の女中が云って、僕等を見て、今一人の女中と目引き袖引き笑っている。
— 森鴎外 『ヰタ・セクスアリス』 青空文庫
生徒の方でも目引き袖引きして此の名も知らぬ若い教師を眺めた。
— 石川啄木 『道』 青空文庫
眼ひき袖引きゃ妾のままよ。
— 夢野久作 『押絵の奇蹟』 青空文庫
通学の道筋に当る町の若い女は眉山の往帰りを楽みにして、目牽き袖引き目送って人知れず焦れていたものも少なくなかったという評判だった。
— ――尾崎紅葉―― 『硯友社の勃興と道程』 青空文庫
真白な肉附きの好い肌が役者のように美くしかったので、近所の若い女が目引き袖引き垣根から隙見したそうだ。
— ――尾崎紅葉―― 『硯友社の勃興と道程』 青空文庫