破れ衣
やぶれごろも
名詞
標準
文例 · 用例
大慈大悲とやらの破れ衣が、通らぬ理屈申して、飽くまでも今の女匿おうと意地張るならば、日之本六十余州政道御意見が道楽の、江戸名物早乙女主水之介が、直参旗本の名にかけて成敗してつかわそうぞ。
— 身延に現れた退屈男 『旗本退屈男 第六話』 青空文庫
…… 六 それから何日か後の月夜、姫君に念仏を勧めた法師は、やはり朱雀門の前の曲殿に、破れ衣の膝を抱へてゐた。
— 芥川龍之介 『六の宮の姫君』 青空文庫
その鳥の巣のやうな髪と云ひ、殆ど肌も蔽はない薄墨色の破れ衣と云ひ、或は又|獣にも紛ひさうな手足の爪の長さと云ひ、云ふまでもなく二人とも、この公園の掃除をする人夫の類とは思はれない。
— 芥川龍之介 『東洋の秋』 青空文庫
映画は徳川末期の浪人の生活苦とその人間苦を主題にして、武士階級の没落を描き出そうとしたものであったが、肩つぎの破れ衣裳を着てぼろ屋のうちに展開される貧しさや苦悩は、貧乏くさくてベルリンにいる日本人の体面をけがす、国辱だ、といきまいているのだそうだった。
— 宮本百合子 『道標』 青空文庫
戦災者はいま戦災の破れ衣を脱いで新しい平和の服に着がえようとしている。
— 永井隆 『ロザリオの鎖』 青空文庫
あたかもそれら二十世紀のフランス人らのうちに、古代の魂が残存してるかのようであり、その魂は美しい裸体にふたたびもどるため、近代の破れ衣を脱ぎ捨てたがってるかのようだった。
— JEAN-CHRISTOPHE 『ジャン・クリストフ』 青空文庫
昔ある処で二十三夜の集まりをしている家へ、見すぼらしい破れ衣を着た一人の旅人が尋ねて来て、祭の仲間に入れてくれという。
— 柳田国男 『年中行事覚書』 青空文庫
昔一人の女が窓の下で機を織っていると、きたない破れ衣の乞食みたような旅僧がやって来て、水を一杯もらいたいといった。
— 柳田国男 『年中行事覚書』 青空文庫