曳摺
曳摺
名詞
標準
文例 · 用例
まさか持ったなりでは行くまいと、半ば串戯だったのに――しかし、停車場を出ると、見通しの細い道を、いま教授がのせたなりに、ただ袖に手を掛けたばかり、長い外套の裾をずるずると地に曳摺るのを、そのままで、不思議に、しょんぼりと帰って行くのを見て、おしげなくほろりとして手を組んだ。
— 泉鏡花 『みさごの鮨』 青空文庫
呼吸を殺して従い行くに、阿房はさりとも知らざる状にて、殆ど足を曳摺る如く杖に縋りて歩行み行けり。
— 泉鏡花 『妖僧記』 青空文庫
」 お丹は勝手次第に綾子の箪笥より曠着を取出し、上下すっかり脱替えて、帯は窮屈と下〆ばかり、裳を曳摺り、座蒲団二三枚積重ねて、しだらなき押立膝、烟草と茶とを当分に飲み分けて、飽けば火鉢の縁に肱つき、小楊枝にて皓歯をせせりながら、「こう、お松どん、何か食べてえものは無えか。
— 泉鏡花 『貧民倶楽部』 青空文庫
一膳めし屋で腹を拵えて、夜通し、旦那、がらがら石ころの上を二台、曳摺って、夜一夜山越しに遣って来やしてね。
— 泉鏡花 『わか紫』 青空文庫
扱帯がずるずると曳摺っていたり、羽織がふうわり廂へかかっておりますな、下駄、蝙蝠傘、提灯、正しく手前方の前なんぞは、何がどう間違ったものでござりますか、大な洗濯|盥が転がっておりましたわ。
— 泉鏡花 『わか紫』 青空文庫
助十 えゝ、おめえのやうな曳摺り嚊がによろによろしてゐたつて何の役に立つものか。
— 岡本綺堂 『權三と助十』 青空文庫
」 斯う呼びながら、其処へ、腰抜け同様になって長い間床に就いているお婆さんが、襤褸を曳摺って奥の部屋から這出して来た。
— 佐左木俊郎 『黒い地帯』 青空文庫
二種の靴跡は、或は強く、或は弱く、曲ったり踏込んだり、爪先を曳摺る様につけられたかと思うとコジ曲げた様になったりしながら、激しく入り乱れて崖の縁迄続いている。
— 大阪圭吉 『花束の虫』 青空文庫