娑羅
さら
名詞
標準
文例 · 用例
便ち是れ娑羅仏廟の東、獅子吼ゆる時|芳草緑、象王|廻る処落花|紅なりし」 と仏国禅師は、善財の求道の旅を讃嘆しておりますが、いうまでもなく、獅子とは、文殊菩薩のこと、象王とは普賢菩薩のことです。
— 高神覚昇 『般若心経講義』 青空文庫
それにつけても人一人身投げをさせて見ているような、鬼婆と一しょにいるのじゃ、今にもお敏は裸のまま、婆娑羅の大神が祭ってある、あの座敷の古柱へ、ぐるぐる巻に括りつけられて、松葉燻しぐらいにはされ兼ねますまい。
— 芥川龍之介 『妖婆』 青空文庫
が、お敏が知ってからは、もう例の婆娑羅の大神と云う、怪しい物の力を借りて、加持や占をしていたそうです。
— 芥川龍之介 『妖婆』 青空文庫
この婆娑羅の大神と云うのが、やはりお島婆さんのように、何とも素性の知れない神で、やれ天狗だの、狐だのと、いろいろ取沙汰もありましたが、お敏にとっては産土神の天満宮の神主などは、必ず何か水府のものに相違ないと云っていました。
— 芥川龍之介 『妖婆』 青空文庫
――と云うのは、お島婆さんがいざ仕事にとりかかるとなると、まずその婆娑羅の大神をお敏の体に祈り下して、神憑りになったお敏の口から、一々差図を仰ぐのだそうです。
— 芥川龍之介 『妖婆』 青空文庫
ところがその晩の十二時に、例のごとくあの婆が竪川の水に浸った後で、いよいよ婆娑羅の神を祈り下し始めると、全く人間業では仕方のない障害のあるのを知ったのです。
— 芥川龍之介 『妖婆』 青空文庫
するとほどなくあの婆娑羅の神が、まるで古沼の底から立つ瘴気のように、音もなく暗の中へ忍んで来て、そっと女の体へ乗移るのでしょう。
— 芥川龍之介 『妖婆』 青空文庫
これじゃ婆娑羅の神と云うのも、善だか悪だかわからなくなった。
— 芥川龍之介 『妖婆』 青空文庫